
産業革命を皮切りに「国家の目的」はどう変わったのか?
これって結構面白いテーマですよね。産業革命以前の国家は、王や貴族が権力を持ち、農業を中心とした経済の中で成り立っていました。でも、産業革命が起こると社会の仕組みそのものが大きく変わり、国家の目標や役割もガラリと変わっていくことになります。
では、具体的にどんな変化があったのか? さっそく見ていきましょう。
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産業革命以前の国家は、基本的に農業社会を前提に成り立っていました。この時代の国家の目的は、大きく分けて次のようなものだったんです。
当時の国家は、経済よりも政治や軍事が中心でした。国の力は「どれだけの領土を持っているか」「どれだけの兵力を動員できるか」で測られていたわけです。
ところが、18世紀後半から19世紀にかけて産業革命が起こると、国家の役割が大きく変わり始めます。なぜかというと、経済の仕組みそのものが変わったからなんですね。
産業革命によって工業化と大量生産が進み、経済の中心が農業から工業へと移ります。これにともない、国家は「いかに経済を成長させるか」を重視するようになったのです。つまり、戦争で領土を広げることよりも、産業を発展させて国の経済力を高めることが国家の新たな目標になったんですね。
たとえば、19世紀後半のドイツ(プロイセン)は、鉄鋼業や化学産業を国家主導で発展させました。ビスマルク(1815-1898)の指導のもとで近代的な産業政策が進められ、工業生産力の向上が国家戦略の柱となったのです。
もう一つの大きな変化は、「国民国家」の誕生です。産業革命以前の国家は、国王や貴族が支配するものでしたが、産業革命によって市民や労働者の力が増し、国民全体が政治に関わるようになっていきました。
たとえば、フランスではフランス革命(1789年)をきっかけに共和制が誕生し、「国家は国民全体のもの」という考え方が広まりました。この流れは産業革命を通じてさらに加速し、多くの国で民主主義が発展していきます。
産業革命以降、国家の目的は次のように変化しました。
経済力こそが国の強さを決める—そんな考え方が生まれました。特に19世紀後半から20世紀初頭にかけて、国家は積極的に産業政策を進め、鉄道の建設や技術開発を支援しました。
この流れを強く推し進めたのがアメリカです。19世紀末には「金ぴか時代(Gilded Age)」と呼ばれる経済成長期を迎え、鉄鋼王アンドリュー・カーネギー(1835-1919)や石油王ジョン・D・ロックフェラー(1839-1937)といった実業家が巨大企業を築きました。
19世紀後半になると、工場労働者が増加し、社会の貧富の差が拡大します。そこで、国家は単に経済を発展させるだけでなく、労働者を守る仕組みを作るようになります。
代表的なのがドイツのビスマルク政権です。彼は世界初の社会保険制度を導入し、労働者の健康保険や年金制度を整えました。これがやがて「福祉国家」の考え方につながり、20世紀には各国で社会保障制度が発展していきます。
産業革命後の国家は教育と科学技術の発展を強く意識するようになります。技術革新が経済成長のカギを握るようになったからです。
特に19世紀の日本では、明治政府が学制(1872年)を発布し、全国に学校を設立しました。「富国強兵」のスローガンのもと、教育を通じて近代的な国家を作ることが目指されたのです。
こうして振り返ると、産業革命を経て国家の目的は大きく変わりましたね。
時代 | 国家の目的 |
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産業革命前 | 領土拡大、軍事力の強化、貴族の権力維持 |
産業革命後 | 経済成長、国民の生活向上、福祉の充実 |
もちろん、現代の国家も経済成長や社会保障を重視していますが、最近では環境問題やデジタル化といった新たな課題にも取り組むようになっています。
このように、産業革命をきっかけに国家の目的は「領土の拡大」から「経済発展と国民の生活向上」へと変わり、現代の国のあり方を形作る大きな転換点になったのです。