イギリスの産業革命の始まりはいつ?

イギリスの産業革命の始まりは、一般的に18世紀半ば(1760年代ごろ)とされています。

 

ただし、産業革命はある日突然始まったわけではなく、さまざまな技術革新や経済的な変化が積み重なって生まれたものです。そのため、「どの時点を産業革命の始まりとするか」については意見が分かれます。例えば、1733年のジョン・ケイによる飛び杼(とびひ)の発明を起点とする説もあれば、1770年代のジェームズ・ワットによる蒸気機関の改良を重要な転換点とする見方もあります。

 

では、イギリスの産業革命はどのように始まり、どの時点で本格化したのでしょうか? ここでは、「前兆となった時期」「本格化した時期」「拡大期」の3つのフェーズに分けて詳しく解説していきます。

 

 

産業革命の前兆(1700年代前半〜1760年代)

産業革命の土台は、18世紀前半から少しずつ築かれていました。

 

農業革命による労働力の変化

産業革命に先立ち、イギリスでは農業革命が起こりました。新しい農法(ノーフォーク農法など)の導入によって食糧生産が増え、農村人口が急増しました。しかし、地主が農地を囲い込むエンクロージャーが進んだことで、多くの農民が土地を失い、都市へ移動することになります。これが、のちに工場労働者となる人々を生み出したのです。

 

繊維産業の技術革新

1733年、ジョン・ケイ(1704-1764)飛び杼を発明し、織物の生産スピードが向上しました。これにより、手作業では糸の供給が追いつかなくなり、紡績機の改良が求められるようになります。

 

産業革命の本格化(1760年代〜1780年代)

この時期になると、機械の発明とエネルギー技術の革新によって、工業化が一気に加速します。

 

蒸気機関の改良

1769年、ジェームズ・ワット(1736-1819)蒸気機関の改良に成功しました。それまでの蒸気機関は燃料の消費が多く、効率が悪かったのですが、ワットの改良によって工場や鉱山での利用が実用化されました。これが、産業革命の決定的な転換点となったのです。

 

繊維産業の発展

1764年、ジェームズ・ハーグリーブス(1720-1778)多軸紡績機(ジェニー紡績機)を発明し、一度に複数の糸を紡げるようになりました。これによって、繊維工業の生産性が劇的に向上し、大規模な工場生産が始まるきっかけとなったのです。

 

産業革命の拡大(1780年代〜1830年代)

18世紀後半から19世紀にかけて、産業革命はイギリス全土に広がり、他の国々にも影響を与えるようになりました。

 

鉄道と蒸気船の登場

1804年、リチャード・トレビシック(1771-1833)蒸気機関車の試運転に成功し、鉄道時代の幕が開きました。さらに、1819年には蒸気船サバンナ号が大西洋横断を果たし、海上輸送の効率も飛躍的に向上しました。

 

工業都市の発展

マンチェスター、バーミンガム、リバプールといった都市が急成長し、多くの工場が建設されました。これに伴い、労働者の数も増加し、都市化が進みました。しかし、工場労働は過酷で、長時間労働や低賃金といった問題も生まれました。

 

まとめ

イギリスの産業革命の始まりは1760年代ごろとされていますが、その前から農業革命や繊維産業の技術革新が進んでいました。そして、ワットの蒸気機関の改良(1769年)をきっかけに、本格的な工業化が始まったのです。

 

こうしてみると、産業革命は単なる技術革新ではなく、社会や経済のあり方そのものを大きく変える歴史的な転換点だったといえるでしょう。