
『夜のモンマルトル大通り』(1897)
第二次産業革命の進展で電気照明が都市インフラとして普及し、夜の街路景観と生活リズムを一変させたことを示す夜景。
出典: Photo by カミーユ・ピサロ(1830-1903)/National Gallery, London / Wikimedia Commons CC0 1.0より
第二次産業革命って聞くと、「あれ?産業革命ってひとつじゃないの?」と思う人も多いかもしれません。実は19世紀後半になると、蒸気と繊維の時代だった第一次産業革命とはガラッと性格の違う“第二ラウンド”が始まったんです。
キーワードは電気と化学工業。さらに鉄鋼や石油産業が大規模に発展していき、社会の姿もがらりと塗り替えられていきました。とりわけ象徴的だったのが都市インフラとしての電気照明の普及です。街が夜でも明るくなるという経験は、人々の生活を根本から変えてしまったんですね。
この記事では、第二次産業革命の内容を「どんな特徴があったのか」「第一次との違い」「電気照明がどう都市を変えたのか」の3つの切り口でわかりやすく整理していきます。
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まずは、第二次産業革命がどんな内容を持っていたのかを見ていきましょう。第一次産業革命の延長ではなく、新しい段階に進んだことがポイントです。
19世紀後半に入ると、蒸気機関に代わって電気が主役の座に。発電機や送電技術の発展により、都市のあちこちに電気が流れ込みました。工場ではモーターを使った効率的な生産が可能となり、家庭や街中でも電気照明が広まっていきました。夜の暗闇を押しのけて煌々と光る街は、人々に「文明の進歩」を実感させたに違いありません。
第二次産業革命を支えたもうひとつの柱が鉄鋼業と石油産業。ベッセマー転換炉や平炉製鋼法によって鉄鋼の大量生産が可能となり、鉄道・橋梁・高層ビルといったインフラが一気に拡大しました。さらに石油精製からガソリンや灯油が取り出され、自動車や照明、機械潤滑油などあらゆる分野に活用されるようになります。
19世紀後半の化学工業は、まさに現代生活の原点。人工染料、化学肥料、爆薬などが次々と誕生しました。特にドイツでは化学企業が台頭し、世界市場をリードする存在に成長。こうした技術革新が各国の競争力を大きく左右することとなったのです。
では、この第二次産業革命は、最初の産業革命とどう違っていたのでしょうか?両者を比べてみると、時代の転換点がよく見えてきます。
第一次産業革命の中心は蒸気機関と石炭でした。ところが第二次では電気や石油が新しい主役となり、より柔軟で効率的なエネルギー利用が広がったんです。蒸気が作業場に束縛していた労働を、電気は自由に配置できるモーターで解放しました。
第一次産業革命の花形は繊維産業でしたが、第二次産業革命では鉄鋼・化学・電気・石油といった幅広い分野に革命が及びました。その結果、都市の景観も大きく変わり、橋やビルが林立する近代都市が形成されていきます。
第一次はイギリスが圧倒的に先行しましたが、第二次はドイツやアメリカが中心的なプレイヤーに。科学研究と産業が強力に結びつき、国家レベルで技術革新が推進されたのも特徴でした。
最後に、この時代を象徴する都市の変貌を見てみましょう。電気照明は人々の暮らしを一変させた、革命のシンボルだったのです。
ガス灯に代わって街を彩った電気照明は、都市の夜を明るく照らしました。これにより夜間の活動が格段に広がり、商店街や劇場は活気づき、ナイトライフ文化も花開きました。まさに「眠らない街」の始まりです。
明るい照明は治安改善にも大きく貢献しました。暗闇に潜む危険が減り、人々は安心して夜道を歩けるようになったのです。またガス灯と違って煤やガス漏れの心配がないため、街の衛生環境も改善されました。
都市が光に包まれる光景は、人々に強烈な近代化の実感を与えました。「進歩」や「文明開化」の象徴としての電気照明は、単なる便利さを超えて社会の価値観や生活のリズムを塗り替えていったのです。
こうしてみると、第二次産業革命は第一次の延長ではなく、新しい段階へと進んだ革新だったんですね。とりわけ都市インフラとしての電気照明は、人々の生活スタイルや都市文化そのものを変える象徴的存在でした。第一次との違いを押さえると、この時代のインパクトがより鮮明に浮かび上がってきます。
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