
過去80万年の大気中CO2濃度の推移
出典: Femke Nijsse / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
地球温暖化の話をするときに必ず出てくるのが「産業革命」との関係です。人類の歴史の中で、この時代ほど環境にインパクトを与えた瞬間はなかなかないんですよ。なぜなら、この頃から人々は石炭や石油といった化石燃料を大量に使い始め、それが空気中にどんどん二酸化炭素(CO2)を積み上げていったからなんです。
実際に科学者たちが南極の氷の中に閉じ込められた空気を調べてみると、過去80万年の間でCO2の濃度は氷期と間氷期の間を上下していて、大体180~280ppmの間を行ったり来たりしていたんです。ところが18世紀後半、つまり産業革命のスタートを境に、グラフは急カーブを描いて上昇。現在では400ppmを超えるところまで来てしまっています。
「人類が機械を使いこなし始めた瞬間から、地球環境のバランスも大きく崩れ始めた」──これが産業革命と温暖化をつなぐ重要なポイントなんですね。
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イングランド西部・コールブルックデール製鉄所(1801)
高炉の炎と煤煙が夜空を覆う情景。産業革命の中核を担ったが、石炭を大量に燃やして二酸化炭素を排出し、温暖化の進行につながった。
出典:Philip James de Loutherbourg(author) / Wikimedia Commons Public domainより
ここではまず、産業革命でなぜ石炭や石油といった化石燃料が中心になったのかを見ていきましょう。燃料選びの変化は、そのまま環境問題の始まりにもつながっていくんです。
産業革命前、人々が主に使っていたのは木材でした。でも人口が増え、鉄やガラスといった産業が広がると、燃料需要は急増。そこで目を付けられたのが地下に眠る石炭だったんです。木を伐り尽くす心配もなく、燃焼力も段違い。効率の良さから一気に主役へと躍り出ました。石炭利用の拡大こそが温暖化のスタート地点だったんです。
18世紀に改良されたジェームズ・ワット(1736 - 1819)の蒸気機関は、まさに石炭を食べて動くエンジン。工場の機械、鉱山のポンプ、蒸気船や蒸気機関車など、あらゆる場面で石炭がエネルギーを供給しました。人類の発展はこの黒い石に支えられていたともいえるんです。
19世紀後半になると石油や天然ガスも登場し、照明や交通手段の燃料として使われるようになります。これでさらにCO2排出は増加。近代の便利さは、温室効果ガスを地球に押し付けながら成り立っていたんです。
過去80万年の大気中CO2濃度の推移
氷床コアと観測で復元したCO2の長期記録。1800年頃の産業革命以降に急増し、地球温暖化の主要因とされる人為起源CO2の上昇を示す
出典: Femke Nijsse / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
次に見ていきたいのは、CO2の排出がどんなメカニズムで積み重なり、今のような温暖化問題へつながったのかという点です。
二酸化炭素は空気中ではごくわずかな成分ですが、地球の熱を外へ逃がさない性質があります。つまり温室効果ガスなんですね。量が適度なら地球を温め、生命にとって快適な環境を作りますが、増えすぎると過剰に熱を閉じ込めてしまいます。
氷床コアのデータを見ると、産業革命以前はCO2濃度が大体180~280ppmで安定していたのに、18世紀後半以降は急上昇。グラフはまるでジェットコースターのように跳ね上がり、今では400ppmを突破しています。この異常な上昇カーブは人類活動の証拠なんです。
CO2が増えると、地球全体の平均気温がじわじわ上昇します。その結果、北極の氷が溶けたり、熱波や豪雨が増えたりと、私たちの生活に直結する問題が表面化。産業革命が生んだエネルギー革命は、皮肉にも地球の気候を変えてしまったんです。
最後に、温暖化の進行が逆に新しい産業や社会の変化を生み出している側面についても触れておきましょう。
温暖化が深刻化する中で、風力や太陽光といった再生可能エネルギーが注目を浴びるようになりました。これはまさに「環境を守るための新しい産業革命」とも言える動きです。
1997年の京都議定書や2015年のパリ協定のように、国際社会が足並みをそろえて温室効果ガス削減に挑む動きも進んでいます。産業革命が「世界を巻き込む変革」だったように、温暖化対策もまた世界規模で進められているんです。
電気自動車やカーボンクレジット市場など、温暖化問題を逆手に取った新しい産業も登場しています。「危機をチャンスに変える」という点では、これもまた人類のしたたかさを表しているといえるでしょう。
産業革命と地球温暖化は、切っても切れない関係にあります。便利さを追い求めた結果、CO2が増え、地球の温度まで変えてしまったんです。ただしその一方で、人類はこの危機をきっかけに新しい技術や国際協力を育ててきました。過去80万年の自然のリズムを壊してしまった私たちが、これからどんな選択をするのか──その先に未来の地球がかかっているのです。
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