
フォードの組立ライン(1913年)
磁気発電機やフライホイールを流れ作業で組み立てる現場。大量生産と標準化が進み、産業革命後の工業化が新段階へ進んだことを示す
出典: Photo by Unknown author / Wikimedia Commons Public domainより
産業革命と工業化って、なんとなく同じような意味で使われがちなんですが、実はスケールも中身も違うんです。産業革命は「歴史的に一気にガラッと変わった大転換」、工業化は「産業が徐々に機械化していくプロセス」。その違いを理解するのにピッタリな例が、20世紀初頭にフォードが導入した組立ラインなんです。この記事では、両者の違いを「意味」「流れ」「社会への影響」という3つの視点から見ていきます。
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まずは、言葉そのものがどんな範囲を指しているのかから整理してみましょう。
18世紀のイギリスで始まった産業革命は、蒸気機関や紡績機の発明をきっかけに、人類史の流れを変えた歴史的事件です。それまで農村や手作業中心だった世界が、工場と都市を中心に動き出すようになりました。「革命」と呼ばれるだけあって、短期間で一気に社会を変えたんですね。
一方で工業化は、産業が機械化・大規模化していく過程を指します。産業革命を含みつつ、その後の進展や第二次産業革命(電気・化学・鉄鋼)までを含めて「工業化の流れ」と呼ぶんです。
つまり、産業革命は「工業化のはじまりを告げる大ジャンプ」、工業化は「そこから続く進化のプロセス」と考えるとスッキリ理解できます。
次に、実際の流れの中でどう違うのかを確認していきましょう。
18世紀のイギリスでは、蒸気機関を軸に繊維産業や鉄道が発展しました。これが「第一次産業革命」と呼ばれるものです。その後19世紀後半になると、電気・化学・鉄鋼を中心とした「第二次産業革命」へ進みます。
工業化はもっと長いスパンを指します。イギリスの産業革命から始まり、アメリカやドイツ、日本に広がり、20世紀には自動車や電化製品の大量生産に至ります。つまり、産業革命をきっかけに始まった「工業化」は、今なお続いているんです。
その代表例が1913年、アメリカでヘンリー・フォード(1863 - 1947)が導入した自動車の組立ライン。これは第二次産業革命以降の工業化を象徴する技術で、車を「分業」で流れ作業的に組み立てることで、一台の製造時間を12時間以上から2時間半にまで短縮しました。工業化の到達点のひとつだったんです。
最後に、産業革命と工業化が社会にどう影響したのかを比べてみましょう。
都市化が一気に進み、労働者階級が誕生しました。貧富の差の拡大や児童労働の問題なども生まれ、社会改革の必要性が叫ばれるようになったのは、この時代の特徴です。
工業化はさらに長い時間をかけて、大量生産・大量消費社会を作り出しました。フォードの組立ラインは「誰でも車を買える時代」を開き、やがて冷蔵庫やテレビなどの家電も同じように普及します。
産業革命は「始まりの大爆発」、工業化は「その後も続く進化の道」。産業革命が火をつけ、工業化が世界を現代へ押し上げた──この関係性を押さえると理解しやすいですね。
こうして見ると、産業革命は「短期間の大転換」、工業化は「長期的な変化のプロセス」という違いがありました。フォードの組立ラインのような技術は、産業革命の延長線上にありながら、工業化の成熟を象徴するものだったんです。
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