産業革命で生まれた新しい社会階層

ランカシャー綿工場の昼休み（1874年）
都市の綿工場で働く男女が昼休みに集う様子。農民や職人から分化した賃金労働者が大量に出現し、産業革命で生まれた新しい社会階層（工場労働者階級）の成立を物語っている。
出典： Photo by Eyre Crowe / Wikimedia Commons Public domainより

産業革命のすごいところって、ただ機械が増えたとか工場ができたってだけじゃなくて、社会の仕組みそのものを塗り替えてしまった点なんです。特に大きな変化は、人々のあいだに新しい社会階層が生まれたこと。ランカシャーの綿工場を例にしながら、資本家と労働者という新しい関係について、一緒に見ていきましょう。

資本家が台頭した

産業革命を動かしたのは機械や工場だけではなく、それを持つ人々──つまり資本家でした。

工場を所有する立場

ランカシャーの綿工場を所有したのは資本を持つ企業家たちでした。彼らは土地や建物、機械を買い、労働者を雇って利益を出す。まさに新しい時代の勝ち組だったのです。

富の集中

資本家は労働者を安い賃金で働かせ、売上を自分の懐に入れました。そのため短期間で巨額の富を築き、中産階級（ブルジョワジー）として社会の上層に定着していったのです。「工場を持つか、持たないか」が社会の分かれ目となりました。

政治的な影響力

やがて資本家は経済力を背景に政治的な発言力も強めていきます。議会に進出し、労働者の声よりも資本家の利益が優先される社会が形づくられていきました。

労働者が生まれた

資本家の対極に位置したのが労働者階級です。彼らは自分の体を資本にして働き、工場に雇われて生活を成り立たせていました。

賃金に縛られる暮らし

農村から都市に出てきた人々は、自分の土地や家内工業を失い、工場労働に依存する生活に切り替わりました。仕事を失えば即失業、生活が立ち行かない不安定な毎日だったのです。

過酷な労働環境

ランカシャーの綿工場では、大人だけでなく子どもまでもが長時間、機械のそばで働かされました。粉じんで肺を痛めたり、事故で命を落とすことも多かったのです。「働く＝命を削る」現実がそこにはありました。

連帯の芽生え

こうした状況の中で労働者たちは団結を模索し始めます。賃上げや労働時間の短縮を求める労働運動やチャーティスト運動が生まれたのは、まさにこの階層が声をあげた結果でした。

資本家と労働者の関係が社会を動かした

資本家と労働者はただ対立するだけでなく、その関係性そのものが近代社会をつくり出す大きな要因となりました。

対立から社会思想へ

労働者の過酷な現実は社会主義やマルクス主義のような新しい思想を生みました。資本家に搾取される構造をどう変えるかが、大きな議論のテーマになったのです。

社会改革の原動力

労働者が声をあげることで、工場法や労働組合の合法化など、社会制度そのものが変わっていきました。資本家と労働者の緊張関係こそが、近代的な社会改革を生んだと言えるでしょう。

現代社会への影響

この新しい社会階層の誕生は、今の私たちの社会にもつながっています。労働条件や福祉制度、さらには資本と労働の対立構造は、形を変えながら現代にも息づいているのです。