ベルギーにおける産業革命の理由

コッケリル社の製鉄・機械工場（セラン、1852年）
リエージュ近郊セランに築かれた大規模製鉄・機械工場の全景で、石炭・鉄鋼・運河の結節点としてベルギーの産業革命を牽引した。
出典： Adrien Canelle（著者） / Public domainより

ベルギーって、ヨーロッパの中ではあんまり目立たない国かもしれないけど、実は「大陸で最初に産業革命をやりとげた国」なんです。イギリスから始まった産業革命の波を、いち早くキャッチして広めていったのがベルギーだったんですね。しかも、その背景には地理的な強みや資源の豊かさ、さらには外国から持ち込まれた技術がしっかり組み合わさっていたんです。今回はその理由を、ひとつひとつかみ砕いて見ていきましょう。

豊富な資源がベルギーを後押しした

まず最初に押さえたいのは、ベルギーが持っていた石炭や鉄鉱石といった資源の存在です。工業化を進めるには欠かせない「燃料」と「材料」が、ベルギーの地中にはしっかり眠っていたんですね。

石炭が動力を支えた

産業革命の心臓ともいえるのが蒸気機関。これを動かすためには大量の石炭が必要でした。ベルギーのワロン地方には石炭が豊富に採掘できる鉱区があり、まさに「燃料の宝庫」と呼べる環境が整っていたんです。このエネルギーの土台があったからこそ、工業化の波に乗れたわけですね。

鉄が機械と鉄道を形づくった

工業化のもうひとつの柱が鉄です。機械を作るにも鉄、鉄道を敷くにも鉄が必要。ベルギーはこれも国内で産出できたため、輸入に頼らず生産基盤を築けたんです。鉄と石炭が両方そろうって、かなりの強みでした。

立地の強みもプラスに

ベルギーはフランスやオランダ、ドイツに囲まれた交通の要所でした。近隣諸国との物流や貿易がスムーズにできたことも、産業の発展に追い風を吹かせた要因です。小さな国だからこそ、ヨーロッパ全体と密につながれる強みを発揮したんですね。

技術移転と人材が成功を呼んだ

資源や立地だけでなく、ベルギーにはイギリスからやってきた技術と人材が大きな役割を果たしました。なかでも有名なのがコッケリル社の存在です。

ジョン・コッケリルと製鉄・機械工場

イギリス出身の実業家ジョン・コッケリル（1790 - 1840）がリエージュ近郊に設立したのが「コッケリル社」。ここは製鉄から機械生産までを一貫して行う巨大工場で、ベルギーの工業化を一気に進める原動力となりました。「大陸版マンチェスター」と呼ばれるほどの拠点だったんです。

技術の“密輸”と知識の拡散

当時イギリスは産業技術の流出を禁止していました。でも、人の移動までは完全に止められません。ベルギーに渡った技術者たちが最新の織機や製鉄技術を広め、現地の産業に火をつけたんですね。これがイギリスから大陸への“橋渡し”になりました。

国王の支援と政治的安定

さらに忘れちゃいけないのがベルギー政府の後押しです。独立後のベルギーは、経済力を強めるために積極的に工業化を支援しました。国王レオポルド1世（1790 - 1865）も産業振興に力を入れ、コッケリル社を保護して成長させたんです。

ベルギーの成功が周囲に広がった

最後に見ていきたいのは、ベルギーが先駆けとなったことでヨーロッパ大陸全体にどんな影響を与えたのかです。

ヨーロッパ工業化のモデルケース

ベルギーの工業化は「イギリスに次ぐ実例」として周囲の国々に大きな刺激を与えました。フランスやドイツも「ベルギーのようにやれば成功できる」と学んだんです。

鉄道網の整備が波及

ベルギーはヨーロッパ大陸で初めて本格的な鉄道網を整備した国でもあります。鉄道で人とモノが動けば、周囲の国との結びつきも強まり、経済全体が活性化しました。鉄道こそが工業化を加速させる決定打になったんです。

「世界の工場」イギリスとの関係

ベルギーの工業化はイギリスにとってもメリットがありました。近くに強力な工業国ができたことで、部品供給や市場拡大につながったんです。結果として大西洋を挟んだヨーロッパ全体の工業力が底上げされました。