
産業革命が各国へ広がった順番の目安(1750-1900)
イギリスを基準に、ベルギー、フランス、ドイツ、アメリカ、日本などの相対的工業化水準の推移を示した折れ線グラフで、曲線の立ち上がりの早さから各国で産業革命が起こったおおよその順番を読み取れる。
出典:Photo by Nicoguaro / Creative Commons CC BY 4.0より
産業革命って、一気にガラッと世界が変わったイメージを持っている人も多いと思いますが、実はゆっくりと段階を踏んで進んでいったんです。まるでドミノ倒しみたいに、ある技術の誕生が次の発明を呼び、さらにそれが別の国へ伝わって…と、連鎖反応のように広がっていったんですね。
この記事では、そんな産業革命の進展を「技術革新の順番」と「世界への広がり」という2つの視点から整理していきます。
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ジョン・ケイ(1704 - 1779)の飛び杼
杼をレールで高速に往復させる仕組みにより横糸の通し作業を一人で可能にし、広幅織物の生産性を大きく高めた道具で、イギリスの産業革命を推し進めた初期の革新。
出典:Photo by Unknown author / Wikimedia Commons Public Domain Mark 1.0より
まずは産業革命がどういう流れで進んでいったのか、技術の登場順を追いかけてみましょう。バラバラに覚えるよりも、流れとして捉えると一気にわかりやすくなりますよ。
最初に大きな変化が起きたのは繊維産業でした。ジョン・ケイ(1704 - 1779)の飛び杼や、ジェームズ・ハーグリーブス(1720 - 1778)のジェニー紡績機といった発明で、布作りが一気にスピードアップ。布は当時の生活必需品だから、この進歩が社会全体に与えた影響はとても大きかったんです。
その人物こそがリチャード・アークライト(1732 - 1792)!水力紡績機でさらに大量生産を可能にしました。
産業革命はまず「布」から始まった──これを押さえておくと理解がグッと楽になります。
次の大きな波は蒸気機関の改良でした。ジェームズ・ワット(1736 - 1819)が複動式蒸気機関を実用化したことで、織機やポンプ、そして鉄道まで幅広く使えるように。これで「工場の動力」と「輸送の力」が一気に変わります。
エネルギー革命が産業革命を押し上げたと言えるでしょう。まさにこの技術が、世界をグングン回し始めたエンジンだったんですね。
布と蒸気に続いて重要だったのが鉄鋼業です。ヘンリー・コート(1740 - 1800)が精錬技術を改良し、鉄の大量生産が可能に。強靭な鉄は鉄道のレールや蒸気船の建造に欠かせず、まさに産業の「骨格」になったんです。
石炭はその鉄を溶かす燃料にもなり、同時に蒸気機関のエネルギー源としてもフル稼働。石炭と鉄、この二つの資源こそ産業革命を支えた双子の柱だったといえるでしょう。
ベルギー産業革命の中心地リエージュの工場群
産業革命の広がりによってベルギーは大陸で最初に工業化を遂げ、製鉄業と繊維業の中心地となった。
出典:Photo by Grandsire / Wikimedia Commons Public domainより
イギリスで始まったこの変化は、ヨーロッパ、そしてアメリカやアジアへと広がっていきました。ここではその流れをざっくり見ていきますね。
19世紀初頭、まず広がったのはベルギーでした。石炭や鉄が豊富だったことから、大陸最初の産業革命国に。次いでフランスやドイツにも浸透し、それぞれの強みを活かして工業化が進みました。特にドイツは化学工業と重工業で頭角を現し、のちに世界の中心国のひとつになります。
イギリス発の流れが大陸を動かした──これが19世紀前半から半ばの大きなポイントです。
広大な国土と資源を持つアメリカにもこの流れは届きました。南北戦争後の経済成長と鉄道網の拡大によって、産業化が一気に加速。やがて「世界の工場」という座をイギリスと分け合う存在に。
ここでも重要だったのは、綿花と繊維産業、そして交通インフラの拡大でした。アメリカの産業革命はスピード感が桁違いだったんです。
19世紀後半になると、産業革命の波は日本やアジア諸国にも押し寄せます。日本では明治維新をきっかけに富岡製糸場などが設立され、西洋技術をどんどん導入。短期間で工業国への仲間入りを果たしました。
中国やインドでは植民地政策の影響もあり、欧米主導の工業化が進んだのが特徴です。産業革命は「世界規模の近代化」を引き起こしたといえるでしょう。
『夜のモンマルトル大通り』(1897)
電灯に照らされた都市の夜景は、産業革命の次の段階としての電力社会の到来を示していた。
出典: Photo by カミーユ・ピサロ(1830-1903)/National Gallery, London / Wikimedia Commons CC0 1.0より
最後に、産業革命の進展は「次の段階」へとつながっていきました。19世紀後半から20世紀初頭にかけての第二次産業革命です。
電灯や電話、化学肥料などが次々と登場し、工業化の幅が一気に広がります。鉄と石炭が主役だった時代から、電気と石油の時代へ──まさに新しいエネルギー革命の始まりでした。
アメリカのフォード社が導入したベルトコンベア方式は、生産をとんでもなく効率化。自動車を誰でも手に入れられる時代がやってきます。
この仕組みはその後、世界中の産業に影響を与え、近代的な大量消費社会を生み出しました。
技術と資本が国境を超えて動き、世界はますますひとつに。鉄道や蒸気船に加え、電信や電話で情報も瞬時に届くようになり、グローバルな経済の基盤が固まったんです。
第一次産業革命から第二次産業革命へ──この流れが現代社会の土台をつくったといっても過言ではありません。
こうして振り返ると、産業革命は単なる「一度きりの出来事」ではなく、技術が連鎖的に進歩しながら世界へ広がり、さらに次の段階へと進んでいった長いプロセスだったことがわかります。今の便利な社会の基礎は、まさにこの連続した変化の積み重ねにあるんですね。
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