
リバプール・アンド・マンチェスター鉄道の開通式(1830年)
蒸気機関車による本格的な旅客・貨物輸送の幕開けを描いた版画。工場制機械工業を後押しする輸送革命の象徴で、産業革命期の重要な出来事として位置づけられる。
出典:I. Shaw, Junior (author) / Wikimedia Commons Public domainより
産業革命って、歴史の授業では必ず出てくるけど、「結局それって何のこと?」って思ったこと、ありませんか?
「工場ができて、機械でモノを作るようになったんでしょ?」
くらいのイメージはあるかもしれません。
でも実は、それだけじゃないんです。
産業革命っていうのは、いわば人々の働き方や暮らしぶりはもちろん、世界とのつながり方まで、社会構造そのものをまるっと変えてしまった大事件。
しかも、その始まりは18世紀のイギリスというヨーロッパの端に位置する島国から。そこからどんどん広がって、気づけば世界中を巻き込むほどのインパクトになっていったんですね。
この記事では、そんな産業革命について
「何が起こったの?」
「どこで起こったの?」
「何がどう変わったの?」
という3つのポイントから、わかりやすくまとめていきますね。
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スティーブンソンのロケット号(ロンドン科学博物館)
蒸気機関車の進歩を象徴したロケット号は、交通革命を引き起こし人や物資の移動を一変させた画期的な存在。
出典:Photo by Train Photos / Creative Commons CC BY-SA 2.0より
まずはそもそも、「産業革命って何が起きたの?」というところから見てみましょう。教科書では機械の発明とかって書かれてますが、実はもっと根っこの部分から、世の中がガラッと動いたんです。
もともと布や道具なんかは、職人さんが手作業で丁寧に作っていました。でも、そこに蒸気機関というパワフルな動力が登場すると、一気に話が変わります。
これまでコツコツやっていた作業が、機械によってスピードアップし、大量にこなせるようになったんです。
つまりは「ひとつずつ作る」から「まとめてガンガン作る」へ──この大転換こそが、産業革命の中心でした。
織機や紡績機もどんどん改良されて、布が安く大量に手に入るように。おかげで庶民の服装もグッと変わっていったんです。
機械がどんどん働いてくれるとはいえ、それを動かすのはやっぱり人間。そこで登場したのが、たくさんの人が集まって働く工場という新しいしくみです。
それに合わせて働き方も変わっていきました。
決まった時間に、決まった場所で、みんなで働く──今でこそ当たり前に聞こえるけど、当時の人にとってはかなりの衝撃だったはず。
自然のリズムに合わせて暮らしていた農村の生活とはまったくの別物で、時間に縛られる毎日が始まったんです。
さらに、工場は川や港の近くに建てられることが多かったので、そのまわりには人が集まり、街ができて、周辺の都市もグングン大きくなっていきました。
もうひとつ見逃せないのが、交通とエネルギーの進化です。蒸気機関車や蒸気船が登場したことで、物も人もビュンと遠くまで運べるようになりました。
それまで何日もかかっていた移動が、ぐっとスピードアップ。遠く離れた地域ともしっかりつながる、そんな時代がやってきたんです。
そして、物を動かすエネルギーも変わります。森の木を燃やしていた時代から、地面の下に眠る石炭をガンガン使って、強力な力を引き出すように。
つまりはスピードと効率がすべてを動かす、近代社会の幕開け──そんな大転換が、産業革命だったというわけなんですね。
イギリス産業革命最初期の水力紡績工場
農村に工場と水利・交通を結び、綿工業の機械化が始まった現場であり、産業革命の出発点を象徴
出典: Photo by Alethe / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
次に見ていきたいのは、この歴史的大変化が「どこから始まったのか」というお話です。始まりはひとつの国。でも、そこからどんどん広がっていったんです。
18世紀の半ば、イギリスで産業革命の幕が上がります。石炭や鉄といった資源がたっぷりあって、海外との貿易でお金も潤沢。まさにスタートダッシュを決める準備はバッチリ整っていたんですね。
それだけじゃありません。農業の効率化で仕事を失った人たちが都市へ移り住み、工場の働き手になっていったんです。
さらに、発明を守る特許制度や、企業の挑戦を後押しする議会政治の存在も、大きな後押しとなりました。
イギリスで始まったこの流れは、19世紀にはフランスやベルギー、そしてドイツといったヨーロッパ各国にも伝わっていきます。
もちろん国によって広がり方には違いがあって、得意な分野もそれぞれ。でも、鉄道や機械工業が浸透していく中で、どの国もだんだんと“近代的な経済”へと姿を変えていきました。
中でもドイツは少し遅れて波に乗ったものの、化学や重工業といった分野で一気にトップランナーへ。
海を渡ってアメリカにもこの革命の波が押し寄せます。特に南北戦争が終わったあとの経済成長とともに、アメリカ独自の発展が加速。
広い国土とたっぷりの資源を活かして鉄道が張り巡らされ、気づけば世界最大級の工業国へと成長していきました。
そのあと日本やアジア、ラテンアメリカにも次々と広がり、気づけば20世紀には世界中で「産業化」が当たり前の時代に。
こうして、もともとはイギリスの一部地域で起きた変化が、 あっという間に世界を巻き込む大きなうねりになっていったんですね。
高架鉄道と密集住宅が並ぶロンドンの街(1870年代)
工場の周辺に人々が集住して長屋がひしめき、都市空間が過密化。鉄道と工場が仕事を呼び込み、農村からの流入が人口集中を加速させた。
出典:Photo by Gustave Dore / Wikimedia Commons Public domainより
最後に、この大きな変化が人々の暮らしや社会にどんな影響を与えたのかを見ていきましょう。「モノの作り方」だけじゃなく、「生き方」そのものが変わっていったんです。
工場のまわりに仕事を求めて人が集まり、あちこちで都市化が進みました。でも、にぎやかになる一方で、問題もいっぱい。
住宅は足りないし、衛生状態も悪い。工場では大人だけじゃなく子どもまで長時間労働…なんてことも当たり前の時代でした。
そうした過酷な現実が、やがて「このままじゃいけないよね」という声を生み、労働法や教育制度の整備につながっていきます。
その結果、都市は単なる「働く場所」から、文化や娯楽を楽しむ“暮らしの拠点”へと変わっていったんです。
蒸気機関車や蒸気船の登場で、物や人の移動が一気にスピードアップ。これまで遠く感じていた国や地域と、ぐっと距離が縮まるようになります。
その結果、貿易は拡大し、国と国のつながりがどんどん強くなっていきました。列強による植民地支配が広がっていったのも、こうした交通革命と無関係じゃありません。
そして誕生したのが世界市場。
どこか遠くの国で戦争が起きたり、作物が不作だったりすると、自分たちの暮らしにもすぐ影響が出る
──そんな「地球規模の一体化」が、じわじわと現実になっていったんです。
産業革命のインパクトは、モノづくりの世界にとどまりません。 資本家と労働者という新しい社会の枠組みが生まれ、立場のちがいがハッキリするようになります。
そうした中で労働運動が起きたり、社会主義思想が広まったりと、政治や社会の動きもにぎやかに。さらに、教育の普及や新聞・雑誌の広がりで、人々の知識や意識にも大きな変化が訪れました。
つまり、産業革命って「ただの技術革新」じゃないんです。暮らしも、社会も、考え方までひっくるめて 全部まとめて塗り替えてしまった。──それが産業革命だったんですね。
こうしてみると、産業革命って「機械ができた」だけじゃなく、生活、社会、そして世界のルールまで丸ごと変えてしまった出来事だったんですね。
今の便利な暮らしや都市の姿も、その延長にあると思うと、ちょっと身近に感じられるのではないでしょうか。このように、産業革命は人類史を揺るがした大変革だったのです。
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